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新時代の経営課題の解決につながる統合報告という考え方と 国際統合報告評議会(IIRC)の役割

Posted 17 April, 2019

国際統合報告評議会(IIRC)が、このたび、統合報告に関する「FAQ」を公開しました。それに伴い、なぜ今こそ統合報告を導入すべきなのか、IIRCのCEOリチャード・ハウィット氏からのメッセージをご紹介します。

もし、自社の価値の20%にしか目を向けていないとしたら、それは問題だと思われませんか?

しかし、それが現実なのです。企業価値の80%は、バランスシートに載っていません。

これまで30年にわたり、市場や社会における関係、社内の人財、そして企業が蓄積してきた知識やアイデアは、「目に見えない資産(無形資産)」と捉えられてきましたが、この資産は今では、企業が21世紀を勝ち抜くための真の価値ドライバーとなっています。

統合報告という概念が、世界中の企業に急速に受け入れられつつあるのは、こうした考え方が根底にあるからです。「多様な資本(Multi-Capitals)」の活用によって企業の成功と破綻が決定付けられる新時代において、社会・関係資本、人的資本、自然資本及び知的資本のどれもが、企業にとって重要であるという考え方です。

こうした認識は、会計士の役割の変化にもつながっています。

国際会計士連盟(IFAC)は世界各国の会計士を代表し、その方針表明の文書の中で「統合報告は、まさに将来の企業報告である」と述べています。

会計業務の最前線に立つ会計士は、組織の財務の健全性に留まらず、それ以上のことを理解し、助言する必要があることを認識しています。つまり、組織が利用し、インパクトを与えることとなる、資源と関係性の全てがどのように有効活用されているか、そのことを理解し、明確に説明することが長期的な価値を創出するのです。

グローバル化の進展やテクノロジー、ソーシャルメディアの台頭、気候変動に伴うリスクの高まりは、「企業の健全性とは相互に関連する各種資本(財務、製造、社会・関係、知的、人的、自然資本)と同義である」という新たな認識をもたらした新しい要因の一部にすぎません。

会計士は統合報告の導入を通じて、この多様な資本の考え方を取り入れる支援をしています。既に70か国以上で、この新たな考え方や行動、情報伝達を推進する組織を会計士が支援しています。

その支援のために会計士が依拠しているのが国際統合報告フレームワークです。このフレームワークは世界中の企業や投資家の協力の下、国際統合報告評議会(IIRC)が作成し、2013年に初めて公表したものです。

2017年に開催された世界規模のコンサルテーション「Framework Feedback Exercise」では統合報告フレームワークの有効性を検証しました。その結果、本フレームワークが新たな報告手法を支援するツールとして確実かつ有効であることが実証されました。

これにより、IIRCは新たにグローバルな戦略フェーズに着手するための基盤を形成することができました。この「モメンタムフェーズ」は、世界がグローバル基準になりつつある統合報告や非財務報告を急速に進めていることを受けたものです。

しかし、私たちは、統合報告に馴染みがない会計士だけでなく、知識を十分に備え企業への導入を支援している実務者も、統合報告の原則の導入手法について多くの質問があることを認識しています。

実際、2017年のコンサルテーションでも統合報告を担当する世界中の実務者から質問が寄せられ、重要な疑問点を浮き彫りにすることができました。

こうしたことを受けて、IIRCは本日、統合思考と統合報告に関する「FAQ」とその回答を公開いたしました。IIRCのウェブサイトでご覧いただけます。

「FAQ」をご利用いただいた際には、その回答がお役に立ったか否かIIRCに直接フィードバックすることができます。IIRCではそのフィードバックを基に今後ウェブサイトを改善・充実させてまいります。

これは2017年に実施したコンサルテーションを受けて実施する、統合報告に関する技術的指導という位置付けの2年プログラムの一環です。「FAQ」の作成及び公開は2019年末まで継続します。

今後数か月間をかけて、導入にあたっての指針(Getting Started)及び各資本・価値創造の概念に関する実務留意事項(Practice Notes)も作成します。

無料で提供するこのリソースをご利用いただくとともに、その情報を同僚の方やお客様と共有してください。

統合報告は、今後これが経営の成功のカギとなることを理解しているグローバル企業や投資家を中心に、これまで着実に前進しており、現在はその勢いを増しつつあります。

グローバルな会計業務はIIRCの使命を実現するという協調体制の中で重要な役割を担っており、各会計士には業務の中でこれを推進する素晴らしい機会が待ち受けています。

自社のビジネスモデルの中に存在する相互に関連するリスクと機会を十分に理解できているか、今一度ご検討ください。

このたび、公開いたしました「FAQ」が皆様の一助となれば幸いです。

国際統合報告評議会

CEO

リチャード・ハウィット

2019年3月